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電力業界社員が不定期に情報発信

競争発注のメリット、デメリット。そして競争の裏側。

 福島第一事故が起きた後、原発の長期停止により現在の電気料金では会社を維持できなくなった電力会社は国に対して電気料金の値上げを申請しました。
 そこで、国や市民団体から強く要請されたのが競争発注の拡大です。当時の電力会社がグループ会社や特定のメーカーへの特命発注や随意契約がほとんで、競争発注の割合はごくわずかでした。
 一般的に競争原理が働かなければ、取引先の言い値で契約されるのでコストダウンに繋がらないという考えです。実際、私も電気料金の値上げが実行されるまでは、工事を発注した際、主管課が作成した工事内訳の金額通りで資材部が取引先と契約してくれていました。 現在はコストカットの意識が高くなり、特命発注だとしても資材部が取引先と交渉し、主管課の査定金額からさらに下げて契約してくれています。電力自由化によりそれだけ電力会社もコスト意識が高くなっている証拠だと思います。
 さて、この競争発注の拡大要請は全社大で取り組むこととなり、当然設備管理部門でも設備の更新工事や新設工事で競争発注を要求されるようになりました。実際、競争発注をしてみて、私なりのメリットとデメリットを考察してみました。
〇メリット
・各社が受注したい金額で入札してくるので、受注者が安値で叩かれたり、水増し見積もりで契約することもなく公平性が保たれる。
〇デメリット
・新規業者が受注した場合、0から当社の仕様や工事方法、マニュアルを理解してもらう必要があり、発注者担当者の負担が増える。また、こちらの仕様要求通りに動いてくれないことが多々ある。
・入札業者同士がけん制しあって、結局出来レースなる場合がある。
・工事費用は最安値で受注したものの、その後のメンテナンス費用が高額な場合がある。
新規業者が受注した場合、0から当社の仕様や工事方法、マニュアルを理解してもらう必要があり、発注者担当者の負担が増える。また、こちらの仕様要求通りに動いてくれないことが多々ある。
これについては、私の経験談として、特注の電源装置の更新で詳細な仕様書を作成して競争発注したのですが、受注者が過去に取引実績はあるものの、特注の電源装置においては初めての納入業者でした。何度か打ち合わせして当社の製作マニュアルも提示して、現場も確認してもらって設計していただいたのですが、工場立会で出来上がった製品を確認したところ、仕様書通りに制作されていませんでした。工事の日程も迫っていたので作り直しを要求することもできず、上司の承認を得て泣く泣く受け入れたことがあります。
最近後輩がやらかしたケースでは、メンテナンス部品の発注で普段は受注しない業者が受注して、全く違う物をを収めてきたことですね。当然返品しましたが・・・
ニュースで年金の委託業者とか、コロナ関係の委託業者の不手際がよく報道されますが、国は民間以上に競争発注が要求されるため、表面上、書類上は問題のない企業でも蓋を開けてみると全く使い物にならないなんてことはよくあるのではないかと思います。競争発注である以上、新規業者の不手際は避けて通れません。
入札業者同士がけん制しあって、結局出来レースなる場合がある。
よくあるのが、入札業者から他の入札業者名を聞かれ、そこが入札するなら競争を下りますという返事をされることがあります。業者間でも上下関係があって、競争を嫌がる場合がありますね。リニア工事でJR東海社員が入札情報を漏らして談合になってニュースになっていましたが、まぁ、ここでは書けないようなことは多々ありますw
工事費用は最安値で受注したものの、その後のメンテナンス費用が高額な場合がある。
大型設備工事では時々これでやられますね。保証期間終了後に部品が壊れてメーカー修理を依頼したら、オムロンタイマー1個取り替えるだけで100万円とかw 値下げを要求したら、じゃあ知りませんってwww
競争発注で気を付けなければならないこと
これまでの失敗談を踏まえて、どうすれば適正に競争発注ができるのかポイントを押さえておきたいと思います。
1.仕様書は細かく記載すること。工法、具体的なマニュアルの提示、寸法等。
2.契約後の監査や工場立会の実施
3.細かい仕様を提示できない場合は技術提案方式の競争の導入
4.メーカーメンテナンスが必要となる設備工事ではメンテナンス費用も含めたトータルでの競争発注が必要
5.入札に関わる他社情報は漏らさない
以上です。
個人的には競争発注は発注側の負担が増えるので嫌いです!!!