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第1種電気主任技術者免状発行までの道のり(実務経験編)

 第1種電気主任技術者の免状を実務経験で取得したので、その道のりについて報告したいと思います。
□ネットや知人の噂では…
 ネットで、実務経験での取得について調べると、実務経歴書を作成するために過去にさかのぼって詳細な業務内容を書かなければならないため、時間と労力を要すること、実務経歴書を事前に産業保安監督部担当者に提出してチェックしてもらうが、そこで数回書き直しさせられること、面談で専門知識が必要な質問に答えなければならないこと等が書かれており、これらの準備をするくらいなら筆記試験を受けた方がマシという意見もあるほど。ある筋の噂で、中部地域辺りでは、実務経験で合格する人は皆無に等しいなんて話も耳にしました。
□私の場合…
 さて、私の場合どれくらい時間がかかったかというと、1年前に上司から会社の方針で君を来年実務経験で電験1種を取らせるからそれまでに実務経験のエビデンスを集めておけという指示がありました。
ステップ1:エビデンス集め
 集めた資料は以下の通り
 ・発電運転員時代の私のサインが入ったパトロールチェックシート
 ・発電運転員時代の私のサインが入った制御室の監視記録
 ・発電運転員時代の勤務割表
 ・17万ボルト以上の設備に係るメーカーとの議事録、社内議事録、発注仕様書、
  工事決定書、工事計画書、設計評価書、検収書、工事記録
 17万ボルト以上であればなんでも良いのでOFケーブル、CVケーブル、変圧器、GISに関する、私のハンコを押した記録を集めました。
ステップ2:実務経歴書作成
 申請する半年ほど前に上司より実務経歴書を作成するように指示があり、作成を開始します。1カ月くらいで作成が完了しましたが、申請するのは私だけではないので、全員が出そろうまでに3カ月ほどかかりました。通常の業務をしながら、事細かく過去の業務内容を思い出しながら書いていかなければならないのでかなり大変でした。
ステップ3:卒業証明書、単位取得証明書の取得
 大学に問い合わせて、卒業証明書と単位取得証明書を発行してもらいます。 単位取得証明書は開封無効であるため、厳封であること、電気主任技術者の免状取得で必要であることを伝えれば、電験仕様で作成していただけます。成績書証明書は全く異なるものなので注意が必要です。
 私はハイテクな私立大出身だったので、ネット上の申請とクレジット払いで完結しましたが国立とかだと現金書留や為替での支払いだったりするので面倒くさいようです。
 単位については、国が指定する科目名と、大学の講義名が必ずしも一致しないので、当時の資格取得に関するガイド(履修要領)があれば本当に自分が必要な単位を取っているのかどうか分かりやすいと思います。
ステップ4:産業保安監督部へ事前チェック
 申請できるようになるまでに、まず経済産業省の地方支部である産業保安監督部へ書類を提出して事前にチェックしていただく必要があります。卒業証明書、単位取得証明書(厳封)、実務経歴書を提出。
 1週間後くらいに、卒業証明書、単位取得証明書(厳封)については問題ないとの回答があり、実務経歴書についてはもっと細かく記載するように指示がありました。(各業務の頻度、誰の指示で業務したのか、トラブル経験の詳細内容等)また、出向中の業務については、電力会社とグループ会社間の当時の契約書が必要であること、それを準備できない場合は、電力会社社長とグループ会社社長の両方の証明印が必要との指導がありました。
 実務経歴書について3回ほど先方とやりとりをして、面談へと進みました。手直し作業の期間も含めると、事前チェックの申請から面談まで3カ月くらいかかりました。(通常業務をしながらの作業なので手直しにけっこう時間がかかります。)
ステップ5:産業保安監督部と面談
 面談はテレビ会議で行われました。事前に先方と電話で、予定日時を打ち合わせを行いました。本来なら直接会って面談ですが、コロナの影響もありテレビ会議での開催となりました。面談の内容は実務経歴書の内容に沿って念押しの確認があったくらいで、知恵袋に書かれているような接地の手順や保護リレーの設定方法を聞かれることはありませんでした。また、申請書の名前と本籍が戸籍と一致しているかどうか、申請書作成時の注意事項などの説明があった程度でした。
 電力会社は信頼されていて、面談も簡易な感じだったのかなと想像しています。
ステップ6:正式申請から免状発行まで
 面談で問題なければ即申請可能です。卒業証明と単位取得証明書は先に提出済みだったので、6600円の収入印紙を貼った「主任技術者免状交付申請書」、社長の公印を押した「実務経歴証明書」、本籍を記載した6カ月以内の「住民票」を送付し、送付から約2週間で免状が届きました。
□最後に
やはり、10年も前の記憶を蘇らせたり、記録を探しながら実務経歴書を作成するのはかなり大変でした。また出向中の工事記録探しもかなり困難でした。これが、やはり実務経験で電験取得が難しいと言われる理由なのではないかなと思います。社内で何人か申請しましたが、一部実務経歴書作成段階でギブアップされた方もおりました。
実務経験で資格取得を考えている人は日ごろから、勤務割表、業務記録のコピーをとっておくことが重要だと感じました。最近は電気系より電子や半導体系の学生の方が圧倒的に多く、必要単位を取得していない電気技術系枠採用社員がとても多いです。
電験1種があれば、老後太陽光発電やビル管理等の管理会社に再就職が可能ですので、老後もくいっぱぐれないですよ!
ただし、電験1種をとったからといって今より良い会社に転職しようなんて甘い考えはやめた方がよいかもしれません。なぜなら事業用電気工作物を管理するさまざまな会社がある中で旧電力会社の生涯年収が一番良いからです。もし、旧電力会社以外にお勤めであれば、旧電力会社に転職されることをお勧めします。