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電力業界社員が不定期に情報発信

脱炭素社会の推進で電力会社の未来は?

 菅総理が、2050年までにco2 ゼロエミッションを宣言したことで、水素、蓄電池系業界の株は暴騰し、原子力の再稼働が鈍り、かつ火力発電に依存している電力会社の株が大きく値下がりしました。
 政府は、洋上風力発電や水素発電へのエネルギー転換を想定していますが、私はそううまくいくとは考えていません。なぜ、火力発電所は低コストで発電できるかというと、海外から輸入した化石燃料を精製せずにそのまま燃やしているからです。石炭火力は石炭を。石油発電所原油を。ガス発電所では天然ガスを使用しています。
 個人用の発電機では一般に手に入りやすいガソリンや軽油、大出力の非常用発電機では重油が使用されたりしますが、いづれ原油を精製した燃料であるため、燃料コストが高いです。
 水素は世の中に広く分布していますが、簡単に取り出すことはできないため、いろいろな物質を化学反応させて水素を精製するため、コストが高くなります。経済を勘案してこれがはたして石炭や原油代替エネルギーになりうるのでしょうか?今でさえ再エネ賦課金で馬鹿高い電気料金を支払っているにも関わらずさらに電気料金の値上げを政府は許容するのでしょうか?
 また、洋上風力の推進もとん挫すると考えています。日本には様々な利権団体があり、また民主国家である性質上一部の反対を押し切って物事を進めていくことが難しい国でもあります。地熱発電所の建設では温泉組合が、山の上の風力発電所建設では山岳団体が、水力発電所の建設では水利組合が、洋上発電では漁協組合が反対し、さらに多額の補償金を求めてきます。
 原発や火力発電所の建設では、海の水を冷却水として取り込み、熱くなった冷却水を排水するため、建設時に漁協組合に補償金を支払っています。
 現在は再生エネルギー発電の固定買取価格の影響で太陽光発電がかなり普及しているが、固定買取期間終了後は1kwhあたり7円でしか買い取ってくれず、蓄電池システムの導入はコストが高いため、故障した太陽光発電設備は修理されないまま放置されていくと思われます。 国は、1kwhあたり7円になった電気で水素を作れば良いと思っているようですが、太陽光発電がほぼ飽和状態となっている今、30年後には修理されないまま放置された太陽光発電がいたるところに放置されていくことでしょう。
 結局、原子力や火力に変わる低価格のエネルギー革命が実用化されない限り、co2 ゼロエミッションは無理だと思います。
 電力株は一時的に暴落しましたが、水素ブーム(雰囲気)が去ればまた上がってくると思っています。