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電力業界社員が不定期に情報発信

通信自由化と電力自由化の違い

 国の規制緩和によって、固定電話や携帯電話の業界では早い段階から、規制緩和され大手通信3社他による競争が繰り広げられてきました。昔から電力業界については地域独占企業などと言われ、オール電化キャンペーンでガス業界から猛烈な批判に晒されるなど、福島事故をきっかけに電力完全自由化の道をたどることとなりました。
 その結果どうなったか、通信自由化と電力自由化の違いを比較してみたいと思います。
■通信自由化のユーザーメリット
IP電話サービス登場等による電話料金の値下げ
格安SIM事業者による格安プランの登場
各種ポイントサービスとの紐づけ
電力自由化のユーザーメリット
大手電力会社より安いプランの登場
各種ポイントサービスとの紐づけ
どちらも業界全体で見ればサービスが向上し、ユーザーにとってメリットが大きいように思いますが、会社として、サービスの品質としてどういうことになっているのかを更に深堀してみたいと思います。
■通信品質の違い
通信品質は各社によってバラバラとなりました。山間部でも繋がるdocomoに対して、Softbankは山間部のアンテナは少なく、通信エリアの網羅性は会社によってバラバラです。また、各安SIM業者では大手キャリアから回線をレンタルし、自社ネットワークと接続させるため、その接続回線の太さによって通信品質が変わります。当然、通信会社が倒産すればサービスは利用できなくなります。
ユーザーは高くて高品質をとるか、安くて低品質をとるかの選択ができるようになり、棲み分けされました。
■電力品質の違い
一方、電力の品質はどこの会社で契約しようが全く同じです。強いて言えば東日本は50Hzで西日本は60Hzというくらい。なぜそうなるかというと、電力の需要(ユーザーの使用量)と供給(発電量)は常に一致するという電気的性質があるからです。通信では、通信会社によって周波数が割り当てられ、そこからさらに端末ごとに細かく周波数が振り分けられるため端末ごとの通信制御が可能ですが、電力は常に周波数が50Hzまたは60Hzに固定されており、各家庭や事業者に接続する電線は契約電力量によって電線の太さやブレーカーの遮断容量が決まる(電気技術基準に基づく)ので会社やお客様ごとに異なる品質にならないのです。
停電は需給バランスが維持できなくなったときや、災害により送電線に事故が起きたときなので、どこの会社と契約しようが停電のリスクに変わりはありません。
■通信会社、電力会社はその後どうなったか
 携帯電話の分野では格安SIMが登場するまでは、何社か通信会社がありましたがその後貧弱な企業は淘汰され、最終的にdocomo ,au ,Softbankと3大キャリアが生き残りました。新規契約はいろいろな割引が適用され格安になる一方、継続利用者は違約金制度により解約し難い状況にし、新しい通信規格が登場するたびにに割高なプランしか選べなくなりました。
 また、携帯ショップは大手キャリアとは資本関係のない企業とフランチャイズ契約し、新規契約獲得数や高額プランへの誘導によってインセンティブが支払われる仕組みであるため、見かけ上安く見せた上で無駄なサービスを契約させたり、割高なSDカードの購入を勧めたりと、情弱や老人を的にした合法詐欺が平然と行われるようになりました。
 格安SIMフリー事業者の登場によって、金融リテラシー意識が高いとそうでない人(又は高品質大容量プランを希望する人)で棲み分けされました。
 一方、電力会社では、どこの会社で契約しても品質は変わらず、会社が倒産しても電線との接続を遮断しない限りは電気の供給が可能であるため、ポイントサービスを含めた値下げしたもの勝ちという状況になりました。
 格安SIM事業者は少なからずMNOとMVNOを接続するためのインフラ投資が必要なのに対して、電力小売りではインフラ投資は不要で、市場や発電事業者から電気を購入し、ユーザーに転売するという手法が可能です。太陽光発電の普及によって昼間の電力が余るため、昼間の電力市場価格が格安となり、発電所を持つ会社より持たない会社の方が安く販売できるという不公平が生じました。その結果、大手電力会社は老朽化した火力発電所を相次いで閉鎖し、冬の寒波到来で電力需給がひっ迫し、電力市場価格が暴騰、格安電力小売り会社が大赤字又は倒産する事態となったり、ユーザーに価格を転嫁する料金プランでは電気料金が10倍に跳ね上がるという事態が起きました。
 また、おかしなことに、「クリーンなエネルギーを選んで購入できる」といううたい文句をよく見るようになりましたが、需給は常に一致しているため、全国の発電量を各ユーザーに割り振っているだけに過ぎないわけですから、誰かがクリーンな電気を購入した分、非クリーンな電気を別のユーザーに押し付けていることになり、日本全体で見た場合のCO2削減には全く貢献していません。
 私は需給バランスのためのインフラ整備を大手電力会社が担いつつ、CO2削減を推し進めるには今の電力完全自由化の現状では不可能だと思っています。理由は先ほども述べたように会社によって電気の質は変わないため、ただの値下げ競争になってしまい、発電事業者が必要なインフラ投資をできなくなってしまうからです。
 再生可能エネルギーの普及によって電気料金は値下がりするどころか毎年値上がりしています。また先日の需給逼迫で、格安料金のプランを廃止したり、ポイントサービスを取りやめたりする事象が起きています。
 公共設備が賦課金制度によって、一部の資産家、設備投資能力のある企業だけが大儲けし、風力発電太陽光発電のために環境が破壊され、庶民が損をする世の中は間違っていると思います。電力自由化はは今すぐ廃止し、電気料金は国が統制し、大手電力会社に再生可能エネルギー発電設備の普及を義務付けさせるべきだと思います。